Contrasto 〈2〉


 2フロアある店内に並ぶ商品には、定番の形のものや、幾何学模様が描かれたものなどシンプルな作品が目立つ。一方それとは逆の繊細な模様の描かれたものや、華やかな色彩のものもある。国内の作家の作品に加えて、イタリアの窯元の陶器が商品の中心だ。

 これらはみな店主の柏渕忠さんが自ら選んだものである。

 わたしたちは取材に際して事前に会社の概要をまとめたものをいただいた。そこには商品を選ぶ基準として、〈価値の満足度の高さ〉〈文化的訴求度〉〈品質の確かさ〉〈ストーリー性〉などがあげられている。

 いくぶん抽象的でむずかしいので訊いてみると、柏渕さんは苦笑した。本人もそんなに大見得を切ったわけではないのだという。

 しかし、「商品のバリュー(価値)って何でしょう? ことさら器や文具などの道具は世間に汎用品が溢れた時代では、物の価値などにそうそう執着しなくなってきているのだと思います。100円ショップで十分だとかね。でも本来、器としての“道具”は料理との相性で美味しく見せたり、食卓を楽しくさせる大事な役目をするものだったはずですよね。つまり生活空間の満足度を高めるのに一役を担っている。器を見て「今日は何を作ろうか」などという思考は生活の豊かさに繋がるはずです。汎用品やマスプロダクトものではなかなかそういうイメージに発展しないのではないでしょうか。こうしたことに気を配り実践している人はまだまだ少数派なのだと思います」。

 こうした満足を得られるもの、そしてデザイン性豊かで質と作り手の確かな「普段使いの良品」。それが柏渕さんの商品選びのこだわりだ。







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